日本酒は、お祝い事や毎日の晩酌など、古くから私たち日本人の暮らしを彩ってきた大切な存在です。ですが、いざ「もっと知りたい」と思っても、どことなく敷居の高さを感じてしまう人もいるのではないでしょうか。
日常生活では使わない専門用語があることも、その理由の一つかもしれません。
今回の記事では、「日本酒の基礎知識を一挙解説」をテーマに、よく見かける専門用語を紹介します。
確かに日本酒には独特の専門用語が使われていますが、数はそれほど多くありません。一度目を通せばぐんと日本酒が身近になるはずです。
また、「どういう意味だったかな」というときにいつでも戻ってこられる用語集としても、ぜひ活用して下さいね。
【1】日本酒とは?基礎知識を押さえよう
最初に、日本酒の定義や材料などの基礎知識を紹介します。
(1)日本酒の定義とは?
普段なにげなく使っている「日本酒」という言葉。実は、酒税法の定義によって「清酒」と「日本酒」の2種類に分類されます。
ここでは、それぞれの違いについて解説します。
【清酒】
清酒とは、お米、米麹、水を原料として発酵させた「もろみ(醪)」をこしたお酒のことです。清酒を名乗るには、この「もろみをこす」という工程が必要です。
原料の産地に決まりはありませんが、アルコール度数は22度未満に限られます。
【日本酒】
日本酒とは、清酒よりも厳しい条件を満たしたお酒のことです。日本国内産米のお米と米麹を主原料にして、日本国内で醸造したものに限られます。
(2)日本酒の原料
日本酒は、お米(酒造好適米)、水、麹という、とてもシンプルな主原料で造られます。お酒の種類によっては、醸造アルコールが加わることもあります。
ここでは、それぞれの働きのほかに、麹やもろみといった日本酒造りに欠かせない原料についても紹介します。
(1)酒造好適米
「酒造好適米(しゅぞうこうてきまい)」とは、日本酒造りに使われるお米のことです。「酒米(さかまい)」と呼ばれることもあります。
酒造好適米の最大の特徴は、お米の中心にある「心白(しんぱく)」が大きいことです。そのおかげで米麹が育ちやすく、発酵がスムーズに進むのです。
また、日本酒の原料となるお米は、まず磨いてから使うため、粒が大きくて丈夫であることも大切です。
食べるためのお米と同じように、酒造好適米にも様々な種類があります。お米と水が主原料の大半を占める日本酒は、酒造好適米によってある程度風味が決まります。
下記は、「四大酒造好適米」と呼ばれる代表的な種類です。
山田錦(やまだにしき):「酒米の王者」と呼ばれる。クリアで芳醇な風味。
雄町(おまち):芳醇でコクのある風味。唯一100年以上栽培され続けている。
五百万石(ごひゃくまんごく):淡麗ですっきりとした、キレのある風味。
美山錦(みやまにしき):軽やかで繊細な風味。
(2)水
お米と並んで日本酒造りに欠かせないのが「水」です。日本酒の原酒を造る仕込みのときと、完成した原酒に加えるときに使われます。
水は、日本酒の80%を占めているため、清らかで、なおかつ日本酒の発酵に必要なミネラルを含んでいることが重要です。
お酒の風味は、水に含まれるミネラルの量にも左右されます。
マグネシウムやリン、カリウムといったミネラルを多く含む「中硬水」で造られたお酒は、辛口でくっきりとした風味で、独特のキレがあります。
豊富なミネラルが麹や酵母の成長を促すので、比較的スピーディーに完成するためです。
一方、ミネラルの少ない「軟水」で造られたお酒は、麹や酵母がゆっくりと成長するので、優しくなめらかな口当たりに仕上がります。
硬度が低くなるほど、より軽やかで繊細な風味になります。
(3)醸造アルコール
「醸造アルコール」は、吟醸酒、本醸造酒、そして普通酒を造る際に添加します。
醸造アルコールは純度が高くて辛口なため、加えることによって、軽やかでキレのある風味や口当たりに仕上がります。
吟醸酒と本醸造酒の場合、添加量はお米の重量の10%以下と決められています。
(4)麹
日本酒を造る過程の一つに、お米のデンプンを糖に変える「糖化(とうか)」があります。そのときに重要な役割を果たすのが「麹(こうじ)」です。
麹は、蒸米に「麹菌」をふりかけ、繁殖させて造ります。
(5)酒母(酛)
「酒母(しゅぼ)」とは、麹・蒸米・水によってできた「日本酒の元」です。多くの酒蔵では、この3つ以外に、酵母や乳酸菌などを加えています。
ここからたくさんの酵母が生まれ、糖からアルコールが造られるのです。
酒母は日本酒を醸造するベースになるため、「酒」の「元」と書いて「酛(もと)」とも呼ばれます。
(6)もろみ(醪)
「もろみ(醪)」とは、酒母(酛)に、蒸米・水・麹を加えて発酵させた「日本酒の原料」です。
これらの日本酒の原料は、一度に混ぜるのではなく、3回に分けて仕込みます。この方法を「三段仕込み」といいます。
(3)精米歩合とは?
日本酒造りに使うお米は、食べるためのお米とは異なり、よく磨いて削ってから使います。
「精米歩合(せいまいぶあい)」は、お米の外側をどの程度磨いたのかを示す言葉です。例えば「精米歩合60%」の場合、お米の40%を磨き、残った60%で造ったお酒のことを指します。
精米歩合が高い日本酒は、クリアでキレのある風味になることが一般的です。
精米歩合が低い日本酒は、お米の旨味やコクを楽しめる仕上がりになります。
【2】日本酒の種類「特定名称酒」とは
清酒には、大きく分けて「特定名称酒」と「普通酒(一般酒)」の2種類があります。
「特定名称酒」とは、高品質な清酒にのみ与えられる名称のことです。名乗るためには、国税庁が定める「清酒の製法品質表示基準」を満たす必要があります。
特定名称酒には、「純米酒」「本醸造酒」「吟醸酒」という3種類があります。ここでは、それぞれの風味や特徴などについて紹介します。
(1)純米酒
純米酒は、お米、米麹、水のみで造られた清酒のことです。吟醸酒や本醸造酒とは異なり、精米歩合が定められていないため、バリエーションに富んだ風味を楽しむことができます。
また、キレと軽やかさを生む醸造アルコールが含まれていないので、お米の深いコクや旨味を味わえる銘柄が多い傾向です。
特に、「ごはんが進む」と言われるおかずとの相性が抜群です。
純米酒のグループには、純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒、特別純米酒の4種類があります。
(2)吟醸酒
吟醸酒は、お米、米麹、水、醸造アルコールで造られた清酒のことです。精米歩合が60%以下であることや、「吟醸造り」という長期低温発酵で造られていることなどが条件です。
この吟醸造りによって、華やかでフルーティーな香りや、淡麗でキレのよい風味などが生まれます。よく冷やすことで、さらにその魅力を味わえます。
吟醸酒のグループには、吟醸酒、大吟醸酒の2種類があります。
(3)本醸造酒
本醸造酒は、お米、米麹、水、醸造アルコールで造られた清酒のことです。精米歩合は70%以下です。
純米酒に似ていますが、醸造アルコールを添加しているため、より淡麗辛口ですっきりとした風味や香りに仕上がっています。
本醸造酒に添加する醸造アルコールの量は、原料に用いるお米の総重量の10%未満で、普通酒よりも少なめです。
本醸造酒のグループには、本醸造酒、特別本醸造酒の2種類があります。
(4)それ以外の日本酒
上記以外の日本酒には、原酒・生酒・生貯蔵酒・生詰・新米新酒・古酒(長期熟成酒)があります。
原酒は、濃醇な風味で、アルコール度数も約20度と比較的高いものが一般的です。
生酒・生貯蔵酒・生詰・新米新酒はフレッシュな風味、古酒は複雑な風味がそれぞれ人気の理由です。
まとめ:日本酒とは?ぜひ気軽に商品情報をチェックしてみよう
日本酒の専門用語は、日常生活ではあまり使われない言葉がほとんどです。そのため、最初のうちは少し取っつきにくく感じるかもしれません。
ですが、3商品ほどお酒のラベルや商品情報などをチェックしてみると、使われている言葉が共通していることに気づくのではないでしょうか。
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